繋げられませんでした、メンシスの脳と月の魔物 (1)
※記事の前に
前もって申し上げますと、私はいわゆる「ソウルシリーズ」各作品は、平行かつ多層的な世界線の一場面としてどこかで繋がっていると解釈しています。
没データ群もゲーム本編の前日抄として、解析前提で配置されていると考えています。
また史実他、各メディア作品群からもBGM含め多数のオマージュがあると考えており、それらの解釈に否定的な方は読むことをおすすめいたしません。
まるで夢野久作著「ドグラ・マグラ」のように奇怪極まりないブラッドボーンですが、とりあえずストーリーは置いといて「メンシスの脳は月の魔物の頭部だったんじゃないの?」という妄想を基に「メンシスの脳」と「月の魔物」について書きたいと思います。
上記を軸に書き込んでいましたが、考えをめぐらせるうちに主人公と月の魔物にも迫る内容となってしまいました。
なお長文となったために分割いたしました。
本記事では関連アイテム群からメンシスの脳と月の魔物、それらに関わるキャラクター達を巻き込みながら記述いたします。
ご興味ありましたら、お付き合い下さいませ。
本記事では大体「メンシスの脳」について、多大なる寄り道をしながらあれこれ記述いたします。
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滅菌装置、メンシスの脳みそ
メンシスの悪夢に到達した狩人に何を訴えたいのか、発狂光線で照らしてくれるメンシスの脳。その様はまるで吊るされたアンコウのようで、どこか切ない。
ドロップアイテム、生きているヒモのテキストからは「メンシスが悪夢で得た脳みそ」「瞳を抱いているが出来損ないの邪眼」「腐っているが生きている」旨がわかります。
また落下させたメンシスの高楼内部、暗闇の中でジェスチャー「交信」をすることによりより鮮明な「月」のカレル文字...すなわち月と示される上位者の声を授けてくれます。
「月」のカレル文字のテキストによると
悪夢の上位者とは、いわば感応する精神であり
故に呼ぶ者の声に応えることも多い
(ブラッドボーン カレル文字「月」より抜粋)
...のだとか。月のカレル文字はヤハグル→メンシスの悪夢→メンシスの脳と、メンシスの脳に近づくにつれて効果が上昇した(鮮明な)「声」が得られます。
メンシスの脳は上位者になりたいミコラーシュ達メンシス学派にも応えたのだろうと推察されますが、吊るされているのを鑑みるに彼らの理想と現実は違ったようです。夢の世界だというのに...
目的は達成されず、しかしメンシスの悪夢に押し入る狩人への対策にはもってこいなので、兵器として吊るされたのかもしれません。きたねぇシャンデリアだ...
なお、メンシスの脳が吊るされていた付近の発狂死体は教会の黒装束達。予防の狩人はメンシスの脳、その恐ろしい光に獣の病の予防効果がある...という啓蒙を得たのでしょうか。
また教区長エミーリアのいる聖堂の門は黒装束が守っていました。彼らはメンシス学派に鞍替えし、メンシス学派はエミーリアを上位者の赤子の母体...実験台にしていたのかもしれません。
また月のカレル文字はダークソウル「貪欲な銀の蛇の指輪」の効果と同様です。そのアイテムテキストには「蛇は竜のできそこないであり 不死の象徴である」とあります。
ほおずきは「輝血」と別名されていたり、八岐大蛇の目がホオズキのように赤いのが由来とされていたりその関連性を否めません。
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進化の悪夢
関連するアイテムテキストを参照してみます。
メンシスの脳は「メンシス=月と示される上位者の脳」であると同時に「メンシス」の脳ではありません。「メンシス学派」が悪夢で得た脳みそでもありません。
「メンシスが悪夢で得た脳みそ」なんです。
メンシスとは誰なのか、どの悪夢で得たのか、そして誰の脳みそなのか、誰が切り落としたのか...テキストからはそんな疑問が匂いたちます。
ところでメンシスの悪夢、その主と明記されているのはミコラーシュですが、悪夢そのものは倒すことで「HUNTED NIGHTMARE」と表示されるメルゴーの乳母...あるいは赤子の笑い声がしてから表示されることを鑑みると、思念体の赤子メルゴー自体と思われます。
※「ドグラ・マグラ」内の架空論文「胎児の夢」を参照するならばメンシスの悪夢とはメルゴーの見た千夜にして一夜の進化の歴史の悪夢とも。
( 胎児の夢)
人間の胎児は、母の胎内にいる十ヶ月の間に一つの夢を見ている。
その夢は、胎児自身が主役となって演出するところの「万有進化の実況」とも題すべき、数億年、ないし、数百億年にわたるであろうおそるべき長尺の連続映画のようなものである。
上記「胎児の夢」をブラッドボーン内の設定に取り入れていると仮定したならば、現実世界は一夜であっても、悪夢世界では莫大な時間が経過する...というカラクリが見えてきます。五億年ボタンですね。
ゲールマンの精神が磨滅しかかっているのも、意志を継ぐエンドでいきなり狩人が車椅子で介護されているのも納得できませんか?
旧市街がつい最近焼き討ちされたように、いまだ火が燻っているのも...
そして狩人の夢で首を切り落とされた、生命の源「血の遺志」を沢山ため込んだ狩人の肉体が、変態し、生存本能のみでながらえているなんて妄想が湧いてきます。
なおゲールマンによる狩人の介錯シーンでは切り飛ばされた狩人の首が映りません。
狩人の首、どこ行った。
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流転の脳みそ
ところで...が長くなりました。メンシスについて続きを。
ミコラーシュは悪夢の主であるにも関わらず悪夢は「メンシス」を冠しています。
つまり実態はメンシスなる存在の支配する悪夢と捉えられるようにも表記されているのです。ではメンシスとはだれなのか。
メルゴーの高楼、その頂上で月をバックに戦う正体不明の存在、メルゴーの乳母こそがメンシスなのではないでしょうか。
メルゴーの乳母=メンシスがメンシスの脳を手に入れた。メルゴーの乳母を倒すと手に入る「三本目のへその緒」のテキストによると別の第三者から。しかし役立たずなのでミコラーシュに下賜された様子。
さて、わざわざ「メンシスの脳」がある悪夢の中で「悪夢で得た」と記述されるのは妙です。メンシスの悪夢に脳みその主と思われるような頭の無い生物は居ません。
別の悪夢で得たと解釈するのが合理的です。
ここでゲールマンのセリフが思い起こされます。
...解放されるのだ この忌々しい、狩人の悪夢から...
狩人の夢も悪夢です。月の魔物を倒すことで「HUNTED NIGHTMARE」の表示がなされるため、まず間違いないと思われます。
少々強引ですが、月の魔物がメンシスの脳の持ち主であった可能性を否定できないのです。
※聖杯エリアは「悪夢」に含まれないと解釈しております。ただし聖杯没エリアに全く異なるデザインの月の魔物が存在し、月も太陽もないただ薄暗い特別な空間であること、オブジェクトデザインがデモンズソウルに存在していることは所謂ソウルシリーズ全体の謎を解くにあたって非常に重要な要素であると考えています。
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おそらくそれは狩人
脱線しましたが、前述したメンシスに脳を与えた第三者の謎について続きを。
メルゴーの乳母が持っていた三本目のへその緒のテキストには
中略 すべての上位者は赤子を失い、そして求めている
故にこれはメルゴーとの邂逅をもたらし
それがメンシスに出来損ないの脳みそを与えたのだ
(ブラッドボーン 「三本目のへその緒」より抜粋)
とあります。変な記述ですね。
「三本目のへその緒」のアイテムテキストなのでこれが示すのは三本目のへその緒のことと思われますが、それが不可解です。
しかし少なくともわかるのは、メルゴーとの邂逅は三本目のへその緒を介して行われたということ。
つまりあの場にはメルゴーの両親が、片方は精神体だったとしても居たはず。
トゥメルの女王ヤーナムが母親であるのは確かです。
白痴のロマ戦後に女王ヤーナムは突然現れ、赤い月へ嫁入りしているかのよう。
なので赤い月との交信と妊娠、メルゴーの意識の宿ったへその緒を取り出される、それをメルゴーの乳母が入手する、に至るまでの一連の出来事は狩人が意識を失っていた間の出来事。
目が覚めるとそこはヤハグルへ続く教会。その間狩人は何をしていたのか...
(キング・クリムゾン!!)
アイテムテキストの示すそれとはこのヤーナムの嫁入りの出来事そのもの...
と書いたものの、いやしかし文面を読むに人物でないとおかしい。
「それ」と呼ばれる存在がメンシスに出来損ないの脳みそを与えている。
話がそれますが、「それ」といえばデイヴ・ペルザー著「"It"と呼ばれた子」を思い出します。
狩人の過去は「悲惨な幼年期」も選べます。というか名前から過去から自分で選んで誓約書に記入します。
まるで夜の訪れの前に、眠ってしまう前に、でたらめな過去の筋書きを夜に起きる自分に書き残して置くような...
車椅子の男が笑っていたのは、それがとても滑稽だったからかもしれません。
自分で自分の名前を付ける前、狩人は何という名前だったのでしょうね?
なお契約終了する(文字通り首を切られる) のはヤーナムの夜明けエンド。すなわち契約者は、謎の車椅子の男は現実世界のゲールマンの可能性があります。
周りくどい話をしました。つまり何を言いたいかというと、メンシスの脳を、メルゴーの意識の宿るへその緒をメンシスに与えたのは、意識を失っていた間の狩人本人、すなわち...狩人は多重人格だったのではないかという可能性。狩人の人格は夢遊病とも言えましょうか。
メルゴーの乳母にメンシスの脳と新鮮なへその緒を渡すことができるのは、どう考えても作中かなりの重要人物。
また狩人は古狩人デュラから「狩りに優れ、無慈悲で、血に酔っている」と評されます。
プレイヤーの操作する狩人は血に酔っているのです。本能のままに行動している。では酔いが醒めたら?
さて、話は重要参考人であるメルゴーの乳母へ。
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無限大な夢の後の
末路はお前の悪夢だぞ、という狩人の心中はさておき。
メルゴーの乳母はムービーでわかるように透明です。血も出ません。すなわち精神体。なお首から下げているのはおそらくハムサ(中東地域などの邪視から身を守るための護符)...と言いたいのですが手を示す5本指ではなく4本指。親指が欠けている?
ロマ戦後どうしたのかは知りませんがメルゴーの乳母は月の魔物の赤子であるメルゴーを(精神体が精神体を、ですが)捕まえています。
こことても不思議。
メルゴーの乳母に赤子を強制受胎させる力があったならば、ロマが倒された時点でオドンのように穢れた血の末裔に干渉するはずです。
自分の子供を優先するのが生物の本能だから、精神体だけど。
※ここからは私の妄想が激しくなります。
そんなメルゴーの乳母ですが協力者は多かったようで、アメンドーズや鐘を鳴らす女などトゥメル関連の上位者であることは確か。
彼は小アメン、その思念体なのかもしれません。
七本ある腕の一本を落とされ殺害されたと思われます。
裏切ったヤーナム、その手先となった墓暴き達によって。
異常者ワラーは小アメンの腕を武器にしています。あの腕、メルゴーの乳母の腕の一本だったのではないでしょうか。メルゴーの乳母の腕は六本です。
「腕を切り落とされたと認識した」後に殺害されたために、思念体となっても落された一本を再現出来なかったのかもしれませんね。
メルゴーの乳母「蛸足奇剣!!」狩人「刀狼流し」
ヤーナムは赤子を求め婚姻したが、レッドゼリー(劣化コピーの赤子)しか受胎させられない憐れな落とし子達、アメンドーズに失望して赤子を受胎させてくれる上位者を求めていたと思われます。その求めた存在こそ月の魔物だったのでは。
そして当然ながら自身も赤子を欲しがっていたメルゴーの乳母(とアメンドーズ達)は、思念体となって以後自身の赤子、再誕者を現実世界に産み落とすため、メンシス学派を操り暗躍していた...と推測します。
月の魔物を裏切って。
「メルゴーの乳母」はメルゴーの乳母なんです。自身の子ではないメルゴーの乳母。
育ての親。前述したハムサが親指を欠いているのも、メルゴーの乳母=小アメンが落とし子である...親である月の魔物から見放されているから、そして邪視=邪眼を、月の魔物を完全には拒絶せず、利用しようとしていたからではないでしょうか。
残念ながら計画は全て狩人に粉砕されますが。
※メルゴーの乳母率いるアメンドーズ達は周りくどい赤子作りをしています。
上位者となりえる赤子にはへその緒=意識が不可欠であり、アメンドーズ達はそれを自身の赤子に与えられないために劣化コピーである意識が芽生えない、思考できない赤子しか作れなかったと思われます。
意識が芽生えない、ということは必然的に大脳が発達していないということで、三本目のへその緒の有無が上位者の赤子に大脳を与えるか否かを決める...脳を肥大させる寄生虫なのかもしれません。(メンシスの脳みそから得られる生きているヒモ)
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へその緒は進化の元
なお三本目のへその緒と上位者の関係性を書き出し、まとめると以下のような図になるかと(個人的に思っています)。デジモンでの例えはまとめの方で回収します。
アメンドーズやエーブリエタースはへその緒を自身の赤子に与えられない。
月の魔物やオドン、ゴースはへその緒を与えれている。
狩人はへその緒を3つ使用することで、なにやら月の魔物を凌ぐ様子。
狩人はへその緒を三本使用することで月の魔物を超えた究極の上位者へと進化する力を得たのかもしれません。
4本目のへその緒で「超究極体」になるのだろうか
デジモン的には「瞳のデジメンタル」でアーマー進化ですね。
さて、ここで少し視点を変えて、メンシスの脳と月の魔物、アメンドーズのデザインから類似性を見出してみます。
...と言いたいのですが酷く間延びしてしまいましたのでここで一旦区切りたいと思います。
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本記事の要点
最後に、この記事の文から最終的な「なんちゃって推理」に使用する論点を。
- 月のカレル文字はダークソウル「貪欲な銀の蛇の指輪」の効果と同様。そのアイテムテキストには「蛇は竜のできそこないであり 不死の象徴である」とのこと。
- メンシスの脳は「メンシス=月と示される上位者の脳」であると同時に「メンシス」の脳ではなく、「メンシス学派」が悪夢で得た脳みそでもない「メンシスが悪夢で得た脳みそ」
- 現実世界は一夜であっても、悪夢世界では莫大な時間が経過する可能性がある。
- 狩人の夢でゲールマンに首を切り落とされた狩人の肉体が、生命の源「血の遺志」を沢山ため込んだ変態し、生存本能のみでながらえているという可能性。そして切り落とされたが画面に映らない狩人の首。
- 狩人の夢も悪夢であるため月の魔物がメンシスの脳の持ち主であった可能性を否定できない
- トゥメルの女王ヤーナムが赤い月との交信と妊娠、メルゴーの意識の宿ったへその緒を取り出される、それをメルゴーの乳母が入手する、に至るまでの一連の出来事は狩人が意識を失っていた間の出来事。
- 狩人は来歴を契約書に記入する、契約終了(首を切る)はゲールマン
- 狩人は「狩りに優れ、無慈悲で、血に酔っている」夢遊病ないし多重人格の可能性がある。
- メルゴーの乳母=小アメンの可能性が高い。手を模った邪視除けの護符を身に着けているが、護符の親指がない(親に見捨てられた?)、またアメンドーズ達は憐れな落とし子と呼ばれている(蜘蛛のパッチ談)
- おそらくメルゴーの乳母(アメンドーズ)は上位者になれる赤子を作る力がなく、親(月の魔物)の子であるメルゴーを自分らの赤子として再誕させた。
いやはや煩雑な内容で申し訳ございません。
次はメンシスの脳と月の魔物について、本人?を見つめながら住処である悪夢についても書きたいと思います。
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引用元
読了してくださり、ありがとうございました。
*1:なお、(おそらく)逆さの湖面でロマが秘匿していたのは、人間全体の「集合的無意識」の心理であり、「獣の本能」...種族の繁栄と進化を願う人間の総意こそが、光を放つ赤い月だったのではないでしょうか。
そして湖の内側から赤い月に沈み込むために、赤子は「メルゴー」という名前を付けられた意味合いもありそうです。
集合的無意識(しゅうごうてきむいしき、ドイツ語:Kollektives Unbewusstes、英語:Collective unconscious)は、カール・グスタフ・ユングが提唱した分析心理学における中心概念であり、人間の無意識の深層に存在する、個人の経験を越えた先天的な構造領域である。普遍的無意識(ふへんてきむいしき)とも呼ぶ。
*2:偉大なる上位の獣は聖杯の没?エリアで戦えます。その姿はまるで生きていた頃のローランの黒獣、または黒獣パール。偉大なる上位の獣はかつて狩られ、それでもなお生存本能(動物的な精神)により遺骨を動かしていたのでしょうか。