繋げられませんでした、メンシスの脳と月の魔物 (2)
本記事では前記事で記述したように、メンシスの脳と月の魔物について、本人?を見つめていきたいと思います。
また上位者の住処である悪夢についても、コラム的ですが関連要素として記述いたします。
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吸血鬼は陽光の夢を見るか?
要約してるようでしていない見出しはさておいて。
メンシスの脳みそは、吊るされていた際は脳みその方から積極的に交信してきますが、暗闇空間に落とされると一転して静かになります。夜行性ではないらしい。
その見た目は正に瞳を得た巨大な脳みそ。
この瞳、モチーフは脳腫瘍でありそうです。脳腫瘍は脳に発生する本人の意思とは無関係の生命、宿主を食らう新生物であるとも。
脳細胞との境界は明瞭であるため、良性腫瘍なのは間違いなさそう。
つまるところブラッドボーンにおける瞳とは、宿主の脳を圧迫し、幻覚(悪夢)を見せる...寄生生物と思われます。
また、メンシスの脳の吊るされていた周囲には瞳が生えていましたが、あれらは瞳の生命体なのかもしれません。フジツボみたい。
他の部分へ視点を移します。
脳を支える、一見すると骨のようなそれは血管。部分的にくも膜のようになっていますが、脳はそれよりも肥大した様子。
脳みその尻尾...にあたる部分は内頸動脈と椎骨動脈、動脈瘤が鈴なりになっています。
脳を支える血管は堅そうです。ひどい動脈硬化と思われます。まるで重度の生活習慣病...もとい肥満脳みそです。脂肪肝ならぬ脂肪脳。
血管が詰まってしまったからか、ひょろひょろの腕(大あご?)は動きません。
メンシスの脳を診察した医師は青ざめた顔になりそうですね。
なおメンシスの脳は脳みその癖に脈動しています、緩やかな鼓動音もあり。脳みそ自体が心臓だとでも言うのでしょうか。上位者の脳みそ凄い。
ここでよく似た見た目のほおずきと比べてみましょう。
メンシスの脳みそはほおずきの頭部と大体一緒ですが、相違点は腕が大きくならないことと、ほおずきは人形の体に繋がっていること。
ほおずきは狩人を食べます。見つけるなり大あごならぬ大腕を伸ばし、「ぱっくりもぐもぐ」その様は、まるで黄色い魔砲少女の最期の様。
ブラッドボーンにおいても狩人達が最も嫌う瞬間ではないでしょうか。
これらからわかるのは、おそらくメンシスの脳みそは餌を与えられ、丸々と太らされたということ。
月の魔物の脳であるとしたらば、正にレームダック。
すなわち役立たずの首脳、皮肉が効いてる。脳髄だけど。
なお、脳腫瘍は高たんぱく、高脂肪の食生活で急激に悪化、成長するそうなので、メンシス学派は大きな大きな瞳を得るためにメンシスの脳みそを育て、終いに腐らせてしまったのかもしれませんね。
ちなみにメンシスの脳にジェスチャー「交信」をすることによりカレル文字「月」を得られますが、この「交信」、手旗アルファベットだとP→Jになります。
信号が変わった際に「月」を得られるのですが、実はこれ、我々プレイヤー視点だとJ→Pとなります。JP、日本のドメイン。
「月」を物言わぬメンシスの脳みそに、我々が見出している。
前の記事で私はメンシスの脳が「発狂光線で照らしてくれる」と記述いたしました。
夜に血を集め、殺戮を繰り返す狩人を夜の種族...吸血鬼であると捉えれば、あるいは夢遊病の別人格だとしたら、眩いメンシスの脳の「太陽の光」に身を焼かれ、あるいは本来の人格の目覚めによりあたかもダメージを受けていると解釈することができます。
鎮静剤が濃い血であるのも、むりやり血に酔うことで別人格の目覚めを遠ざけているのではないでしょうか。
プレイヤーは意図せずして太陽の光であるメンシスの脳の光を嫌う訳ですから、これが太陽の光とあっさり理解されては謎にならない。
それゆえに「メンシスの脳みそ」という先入観を利用した叙述トリックを用意したのではないでしょうか。
さて、いよいよほったらかしてきた月の魔物本人について記述するとしましょう。
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月の魔物というバケモノ
いやあ素晴らしいデザインですね。
ヒルのようにぽっかり空いた穴の顔と髪の毛みたいな無数の触手、ダークソウルの貪食ドラゴンのような胸部は一切の内臓を欠いています。腹部なんて背骨だけです。
体格はアメンドーズと大体一緒、ヤハグルのアメンドーズは頭の下から触手が出ています、(普通にクトゥルフモチーフですね)。
強いて言えば尻尾の形状がメンシスの脳の尻尾と似ているでしょうか。
さて、その戦闘ぶりは正に獣ですが、なかなか不自然。
ひたすらに暴れまわり、しかし狩人を正確に狙えていない。
それどころか見失った狩人を探すようなそぶりさえ見せます。
おそらく目は見えていない。
面白いのは狩人のHPを0にする技。しかしリゲインでそれを取り戻せる。
↑これが重要でして、次記事で拾います。
さて、上記から解るのは内臓がすでに無くなっており、生物として月の魔物を見るなら、既に死んでいるということ。
黒獣パールのように生存本能の意識のみで動いているのではないでしょうか。
しかし疑問が湧きます。なぜ敵対者の居ない狩人の夢にいながら死んでいるのでしょう。
本当に頭部があの形状ならば、生物ですから、あのような内臓の腐り落ちた姿にはならないはず。
なんらかの外的要因があってあの姿になったと思われます。
(ようやく主題に繋がりました、まあ結果的に繋がらなかったんですけど。)
つまるところ、肥満化させられる前のメンシスの脳が、月の魔物の首に繋がっていたのではないでしょうか。
月の魔物は頭部を切り落とされ、餓死し、あのような姿になったのだと思われます。
月の魔物の頭部にアメンドーズのような頭部があったならば、親子関係であった可能性も信憑性を増します。
ともあれ、頭が無くても死なない、そんな気持ち悪いほどの生命力を持った生き物、そのモチーフは我々の生活のすぐ近くにいます。
Gです。G。古き名はごきかぶり。御器=器すらかじるためにその名がついたそうです。
名前はともかくとして、この生き物、首をもがれても一か月は生きるそうな。その後の死因は餓死。
なぜ生きれるのかというと、食道下神経節により手足は制御されているから。
鶏でも首が無いまま18ヶ月生きていた鶏、「首無し鶏マイク」というのがアメリカであったそうです。(その鶏は脳幹と片方の耳が残っていたため生存できたそう。)
月の魔物は頭部の基部にあたる触手は残っており、それらが脳幹に当てはまる、あるいは食道下神経節、また脊椎反射により行動しているのかもしれません。
前記事で取り上げたドグラ・マグラにも「脳髄は物を考える処に非ず」などと(架空論文で)論じられています。
それらをデザインに反映したものが、本編の月の魔物の頭部なのではないでしょうか。
(まるで頭半分なくなっても平然としてた白髭みたい。)
ちなみに月の魔物の登場シーンは太陽をバックに決めポーズする究極生命体カーズのよう。(ジョジョの奇妙な冒険第二部ラスボス)
そう捉えるとメンシスの脳やほおずきはワムウやエシディシの最期みたいですね。
(エシディシは脳みそだけで行動、ワムウは首だけで部下である吸血鬼を多数殺害。)
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継ぐ者と月の魔物
三本目のへその緒を三本使用していない場合は「遺志を継ぐ者」エンドとなり、
月の魔物に獣の抱擁をされ、ゲールマンと同様に狩人の夢の管理者にされるようです。
重要なのは抱擁される描写。狩人を大切な人形のように両手で抱え、その顔を近づけ...
聞こえるのはゴポゴポという水音。
狩人は月の魔物に血を吸われたんじゃないでしょうか。
これは後続のフロムソフトウェア作品であるSEKIROにおいて、ゲーム根幹に関わる重要な要素として扱われております。
SEKIRO主人公である狼は、特別な血(竜胤の血)を持つ主、九郎にその血を受け入れられたことにより従者となっており、主のいる限り不滅の存在と化しています。
上記の、通常考えられる吸血鬼と眷属の関係と真逆のシステムは、そのモチーフを古事記に見受けられます。
日本の神話は口伝の諺ないし歌として伝えられ、それらが書き起こされたものですが、天皇にまつわる歌が本筋として置かれ、そこに後から血統の交わった氏族の歌も編纂され、まとめられたものが古事記だそうです。
これを基にブラッドボーンにあてはめると、月の魔物に血を受け入れられ、狩人は月の魔物を主神とした上位者の系譜に連なった、ということになります。
これはただ上位者の血を体に入れ、眷属ないし獣となるヤーナム内外の雑魚連中や一般狩人とも全くもって別次元の話です。
ミコラーシュも同様にメルゴーの乳母に血を受け入れられ、悪夢の管理者の立場となったのかもしれませんね。
それならば悪夢の主と表記されるのも一応理屈にかないます。
さて、これまで月の魔物の象徴である赤い月は、月ではなく太陽ではないか?と、メンシスの脳の光も交えながらいくつか仮説の要点を提示してきましたが、もう少し補足したいと思います。
まずは狩人の夢、その浅い眠りについて。
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目覚めへの夢と無意識の夢
ロマ戦後の狩人の夢。「若干欠けた月」と、夜明け前の空。この赤く染まる雲は、狩人の夢を中心に円を描いています。まるで、狩人の夢にある太陽が昇る前のように...
それはともかくとして、狩人の夢は雲海に浮かぶ絶海の孤島のようでさえあります。
(どうみてもラピュタ)
メンシスの悪夢は辺境の悪夢と、狩人の悪夢は漁村と...他の悪夢とのつながりを感じさせますが、狩人の夢は明らかに狭く、異質。
そしてあらゆる場所の目覚めにも、あるいは悪夢の中にさえ、果ては深い迷宮の底にすら、繋がっています。
次は狩人の夢と悪夢の違いについて
レム睡眠は、鳥類と哺乳類にしかみられない。
レム睡眠は睡眠中の状態のひとつで、身体は骨格筋が弛緩して休息状態にあるが、脳が活動して覚醒状態にある。
レム睡眠時には視床での情報伝達が遮断され、脊髄のレベルで筋肉への情報伝達が遮断されて、運動機能が制止されている。
大脳皮質は覚醒時よりもむしろ強く活動しており、運動機能を遮断しておかないと身体が寝ながらにして激しく動いてしまうことになる。
ただし眼球だけが急速に運動している。レム睡眠時には脳の強い活動の反映として夢を見る
ヒトでは新生児期に多く睡眠時間のおよそ半分を占めるが、加齢に従って徐々に減少し、小児期で 20%、大人では睡眠時間の約20 - 25% になる。
つまりレム睡眠は、体は寝ているけれど、脳は起きている睡眠、夢を見るのはこの睡眠の時で、新生児は半分がレム睡眠。
(胎児の夢が長い...という架空説もあながち間違いでもない?)
そして「レム睡眠は、鳥類と哺乳類にしかみられない」というさらりとした重要事項。
次は反対のノンレム睡眠について。
急速眼球運動を伴わない睡眠のことをノンレム睡眠 (Non-rapid eye movement sleep,Non-REM sleep) または徐波睡眠(じょはすいみん)という。ノンレム睡眠はステージ1(N1)からステージ4(N4)までの4段階に分けられ、N4が睡眠の最も深いレベルである。
睡眠時間の50-60%はN1-N2睡眠が占めている。
レム睡眠は入眠後2時間以内に現れるが、入眠から30分以内にレム睡眠が現れた場合はうつ病、ナルコレプシー、サーカディアンリズム障害、薬物依存などの病態が疑われる。
面白いのは眠りの深さに4つのステージがあること。N1~N4までの眠りの深さがあり、睡眠時間の5~6割はN1からN2。
これをブラッドボーンの悪夢空間に当てはめると、
レム睡眠→狩人の夢
ノンレム睡眠
N1→メンシスの悪夢
N2→辺境の悪夢
N3→漁村
N4→狩人の悪夢
となりましょうか。上にいくほど目覚めに近く、それゆえに太陽の如き月の魔物が住まうのではないでしょうか。
反対に下ほど深き眠りとなり、アメンドーズに誘われた古狩人達はその深い眠り...無意識の底に沈んでいるのかもしれません。
またマリアは、一つ浅い眠りである、漁村へ続く時計盤を守っています。
古狩人達がその先にあるものを夢に見ないように、あるいは無意識の海から目覚めてしまうのを防ぐために、時を止めていたのかもしれません。
ちなみにヴァルトールは主人公と一緒で悪夢に囚われません。衣装と武器が落ちていたり、ルドウィークと平然と渡り合ったり...ヴァルトールの謎に迫る重要な要素であることは確か。というより多分彼は...
※レム睡眠について関連する記述を少し。
レム睡眠は哺乳類と鳥類にしか見られない...ということは、ゴースはもとよりアメンドーズも哺乳類ではなく、例外的に狩人の夢に居る月の魔物は哺乳類である、ということなのかもしれません。
アメンドーズは爬虫類だったのかもしれませんね。
狩人は入眠直後でレム睡眠である狩人の夢へ行くため、うつ病、ナルコレプシー、サーカディアンリズム障害、薬物依存の可能性があるのは確かです。
次に狩人の夢の戦闘エリアに咲く植物について記述する...つもりでしたが長くなってしまったため、次記事に記述いたします。
最後に本記事の要点を。
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本記事の要点
- メンシスの脳は夜行性ではないらしい。
- メンシスの脳は後天的に肥大し、腐った可能性がある
- 狩人を吸血鬼である、あるいは夢遊病の別人格と解釈すると、メンシスの脳の「太陽の光」に身を焼かれ、あるいは本来の人格の目覚めによりあたかもダメージを受けていると解釈することができる。
- 鎮静剤が濃い血であるのは、むりやり血に酔うことで別人格の目覚めを遠ざけている可能性がある。
- 生物として月の魔物を見るなら、既に死んでいる。
黒獣パールのように生存本能の意識のみで動いている可能性がある。
- 月の魔物は頭部の基部にあたる触手は残っており、それらが脳幹に当てはまる、あるいは食道下神経節、また脊椎反射により行動しているのかもしれない。
- 夜明け前のように赤く染まる雲は、狩人の夢を中心に円を描いている。しかし太陽は出てこない。
また欠けた月は、月の魔物とともに現れる赤い月とは全く方向が違う。
- おそらく狩人の夢は無意識の海に浮かぶ、目覚めにほど近いレム睡眠の夢
- 狩人は入眠直後でレム睡眠である狩人の夢へ行くため、うつ病、ナルコレプシー、サーカディアンリズム障害、薬物依存の可能性がある。
今回も読了いただきありがとうございました。
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引用元